【キャリアインカレ】セコムインタビュー

【キャリアインカレ】セコムインタビュー

セキュリティサービス最大手のセコムは、実に多種多様な角度から私たちの生活の「安全・安心」を実現しています。そしていまやセコムが提供しているサービスから伺える“セコムらしさ”もまた決して一つに留まりません。そんないまのセコムを最前線で牽引している沙魚川さんに、今回のテーマに込めた意図を伺ってみました。

■お話をしてくれた方
沙魚川(はぜかわ)久史さん
セコム株式会社 オープンイノベーション推進担当リーダー

1976年生まれ。研究開発やコーポレート全般の企画業務に従事し、現在オープンイノベーションチームを率いる。イノベーション推進に向け「セコムオープンラボ」を主宰。東京理科大学総合研究院客員准教授・ほか各種研究職を兼任する。

セコムテーマ

シーズありきではなく、ニーズから考えていこう。


――今回の課題のテーマには、言葉の一つ一つにこだわっていらっしゃるそうですね。

沙魚川さん:はい。昨年度もそうでしたが、テーマのフレーズには全てロジカルに意味を持たせています。例えば、「2030年」としたのにも理由があります。今すぐに実現できる提案に関しては、大人たちが既に考えてしまっていますので、未来をつくる学生のみなさんには、もうちょっと先の未来に関して自由に発想してほしいとの想いを込めました。

10年先の私たちの社会は一体、どうなっているのか? まだ正確にはわかりにくいところがありますが「その時代ならばできるよね」という予測で構いません。ただ、企業側が既に持っている技術や発明など、使いたい技術ベースの“シーズ”から考えていくと、お客様抜きの思考になりがちでビジネスにはなりにくい。ですから学生のみなさんには「こんなことがあったらいいのに」とか「なんでこれないんだろう」というような、解決すべき欲求ベースの“ニーズ”ありきで考えていってほしいと思います。

私たちのサービス創りでは、こうした課題志向の視点を大切にしています。課題というのはつまり、社会の中の、あるいは日常の暮らしの中の、お困りごとですね。これはテーマの中の「セコムらしい課題起点」というフレーズにも現れています。

セコム1

――「2030年」はセコムが掲げる2030年ビジョンに通ずるものがあるのでしょうか?

沙魚川さん:2030年に向けてセコムの方向性を提示する「セコムグループ2030年ビジョン」。ここでは「変わりゆく社会に、変わらぬ安心を。変わり続けるセコム。」との一文をキーメッセージに掲げています。社会の不確定要素が高まり、なおかつ社会が抱える課題が複雑化・複合化していく中で、今から10数年後のセコムのサービスの在り方はどうあるべきか、そして、そのために今から何を準備するべきかという道しるべです。そうした背景も今回のテーマに「2030年」というゴールを用意した一つの理由となっています。

――“社会や日常のあたりまえを変えていく”という言葉も気になりましたが。

沙魚川さん:昨年度、キャリアインカレに初参加した際には、「日常のお困りごとを解決するセコムの新しいサービス事業」というテーマを設定しました。参加した各チームからは、日常に根差したとてもよい問題提起をいただいて刺激的でした。これはたいへん素晴らしかったのですが、一方で今年のテーマを考えたときに、昨年意識しなかったスケール感を採り入れたいと思いました。“日常”だけに捕らわれると、社会に大きなインパクトを与えるという意味合いが不足するかもしれません。
そこで今回は、広い視点から「社会や日常のあたりまえを変えていく」プランを考えてもらうことにしました。“社会”と“日常”、いずれか一方だけを採りあげてもいいのですが、両方の視点から考えていただけると嬉しいです。社会課題を解決しながら、さらに加えて、日常のたのしさも生み出せるようなアイデアだと素晴らしいですね。

セコムというと、学生のみなさんの多くはホームセキュリティのイメージが強いかもしれません。しかし、調べていくとセコムが非常に広範な事業を有しているのがわかるはずです。実際、画像解析やセンサー解析はオフィス向け以外にも、東京マラソンや大規模イベントなど様々なところで活用していますし、インターネット上で使う電子証明書を唯一国産で発行している機関はセコムです。みなさんのスマホやPCにも、セコムの電子証明書が入っているんですよ。
また、ロボットやドローンを開発して活用する省人化も古くから進めていますし、車の自動運転向け3次元地図を手掛けるグループ会社もあります。AEDでも国内トップレベルのシェアを持ち、家や外出先で具合が悪くなったご利用者向けの救急通報サービスや、病院の運営支援も手掛けているなど、至る所にセコムが進出しています。みなさんが「社会や日常に注目した課題起点」で調べていく中で、これぞと思う“セコムらしさ”を見つけてください。

新しいモノやサービスを生み出していくには、現場での洞察が大切。


――昨年はキャリアインカレ初参加でしたが、どのような印象を持たれましたか?

沙魚川さん:2次予選のビデオ審査からみなさんのアイデアを拝見したのですが、いずれもチームも日常の課題を起点にしてニーズを良く調べ上げてきたな、という印象です。その中でも魅かれるものがあったチームの多くは、現場を見に行って、そこにいる人にインタビューをしたり、観察した上で自分たちなりのファクトを集めていました。

インターネット社会の今、ちょっとした情報はパソコンやスマートフォンでも調べていくことができますし、どうしても白書やデータ集に載っている客観的で教科書的な意見に依ってしまいがちです。しかし、現場で実際に何が問題なのか、現地にいる人たちが何を考えているのか、主観的な意見に直接、触れていくとわかることも多々あるのです。

私たち自身、新しいサービスを生み出すときには、一般的にどうかということ以前に、個々が主観で感じている課題を出発点にすることがよくあります。だからこそ、今年のテーマにおいて、みなさん自身が当事者となった主観の意見も求めたいですし、その主観を確認するためにも現場に赴き自分なりの洞察を得たり、意見を聞くというのを大切にしてほしいです。

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――沙魚川さんも、様々な立場の人の意見に触れるお仕事をされているんですよね。

沙魚川さん:セコムの「オープンイノベーション」をリードしています。社会の変化を先取りして未来を展望するために、一人ひとりの多様な価値観の拡がりを大切にしていますね。業種・業界の垣根を越えた企業や、研究者、専門家らが集まるデザインシンキング型ワークショップ「セコムオープンラボ」はこの活動の代表例で、社会的な新たな価値や課題を発掘し、どういうサービスであれば解決できるかを議論しています。
対話で得られた気づきや仮説をもとに、データ調査を展開して、プロトタイプをつくって社会実験や価値検証をして、実際に商品・サービスを創るところまでを行っており、これまでにいくつも成果を世に送り出しています。

直近では、2019年4月に「バーチャル警備システム」を発表しました。セコムは基本的にはセンサーを使って空間の状況を検知するビジネスを得意としていますが、一方で人が多く来訪するような場所では警備員が立ってコミュニケ―ションをする対応も必要です。日本が労働力不足になっていく中で、こうしたニーズの高まりに対応していくために、セコムが得意とするセンサー技術や画像処理技術を駆使するとともに、他社の力もあわせたオープンイノベーションで、実在感のある等身大キャラクターによるバーチャルな警備員が受付業務や警戒監視をするシステムを開発しました。AI技術とロボット技術、そしてキャラクターによる、日本らしいセキュリティを令和の時代の新しい当たり前にしていきたいと考えています。

こうした新サービスを創っていく過程では、改めて社会との対話の大切さを実感しています。企業目線だけだと、既存商品を拡張すれば、お客様に喜んでいただけるのではないかと思いがちです。なんとなく目に見える問題を解決していくと喜ばれていた時代はそれでもよかったのですが、現代ではそんなストーリーは成立しません。社会が成熟した今、一人ひとりの課題感は個別化して、全く異なっています。
自分が思う課題と、他人の課題は全く異なっており、だからこそ、話し合いながら可視化し、解決していくのがとても重要なのだと感じているところです。

言わなければ可能性はゼロ。言えば可能性が芽生える。


――セコムはこれからどういう方向に進んでいくのでしょうか?

沙魚川さん:セコムは、創業時から「社会にとって有益な事業を行う」という基本理念を根底にすえ、誰もが安心して過ごせる社会をめざして、セキュリティ、防災、メディカル、保険、地理空間情報サービス、BPO・ICT、不動産の7つの事業を展開してきました。日本のみならず、海外18の国と地域に進出するとともに、さまざまな新しいサービスを生み出しています。

社会の不確実性が高まり、変革が進んでいくなかで、「安全・安心」はますます必要不可欠なものとなるはず。社会に貢献する事業を創出していくセコムの出番は多いと考えています。モノが大量生産から少量多品種へなってきたように、サービスも単一パッケージではなく、様々なニーズに対応して一人ひとりに寄り添いパーソナライズされたものになっていくでしょう。そうしたなかでは、「セコムオープンラボ」のように多くの人たちが集まって、対話するなかで新しいインターフェイスやプラットフォームが生まれることもあるのかもしれません。

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――今回、はじめて挑戦する学生もいると思います。課題に挑む際に注意すべきことを教えてください。

沙魚川さん:社会や日常の中で当たり前に感じていたことでも、見方を変えると不便だったり不快だったりすることがある筈です。無意識に皆が工夫したり対応したりしていた不便さ、あるいは、解決を諦めていた不安、不自由、不快が、もしかしたらゼロになるかもしれない――そんな発想のもとで始めてみてはいかがでしょう。
当たり前だったことを「嫌だ」という視点で見れば、それが課題となっていくものです。そうした課題を裏返して「こうなると良いよね」が得られれば、それがすなわちアイデアでありゴールです。

キャリアインカレはチームでの協働となりますが、自分の意見がつぶされてしまうのを恐れて、何も言わないのはよくないこと。マイノリティな視点の意見であっても、それがメンバーに気づきを与えるきっかけになるかもしれないのです。そもそもマジョリティな意見は“誰かがどこかで言っていること”であることが多いです。自分の意見をきっかけに「その発想はなかったよ」ということになれば、より幅広い角度からテーマを掘り下げられるはずです。言えば可能性が芽生えますが、言わなければ可能性はゼロのまま。いったん意見を言ってテーブルに載せてみるというのを忘れないでください。

――最後に学生にメッセージをお願いします。
沙魚川さん:テーマを自分のこととして、自分たちの日常ベースに落とし込こみ、「あなたなりに」「社会の課題」「日常のお困りごと」を想像し、それが「2030年の未来ならどうなっているか?」と考えてもらえれば嬉しいです。

重要なのは解決方法でなく、真の課題を議論することです。課題の設定が正しければ、解決方法は自ずと正しくなるもの。学生の皆さんが、セコムをどう料理するか、どんな展開を発想するか、どんな社会や技術の創造を考え出すかとても楽しみです。未来を担う大学生の柔らかい頭と新しい切り口で、セコムのビジネスを議論いただけることを期待しています。

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