学生起業のリアル~キャリアインカレ2016総合優勝 下山明彦(東京大学 Senjin Holdings CEO)

学生起業のリアル~キャリアインカレ2016総合優勝 下山明彦(東京大学 Senjin Holdings CEO)

キャリアインカレ2016を制した後、起業した東京大学の下山君。起業のいきさつについて 以前インタビュー したが、起業して立ち上げた「CoinOtaku」は仮想通貨メディアでは国内トップクラスのメディアへ成長した。そして今回、Coinotakuを学生インターン生に引継ぎ、下山君自身はSenjin Holdingsというホールディングスを生み出した。

今回はその経緯や学生起業の実態について生々しいインタビューをお届けする! (取材・執筆:羽田啓一郎)
*このインタビュー記事は2019年7月時点の情報を元にしています。

学生起業からホールディングス化へ!

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キャリアインカレ2016総合優勝が決まった瞬間。チームメイトと感情を爆発させた。

羽田: お久しぶりです!

下山: お久しぶりです。キャリアインカレ、今年も始まるんですよね?僕もう一度出たいです!

羽田: いやいや、後輩に譲ってあげてください(笑)。今日は下山くんが立ち上げたコインオタクがホールディングス化すると聞いて、そのあたりのお話を聞くとともに、「起業」について色々深堀りしてお聞きしたいなと。あ、その前に下山くんってまだ学生なんですよね?

下山: バリバリ学生ですよ。何ならこの後授業です。学問は好きですし卒業はちゃんとして、その後院に進学するかもしれません。

羽田: 今回のホールディングス化について概要をお話してもらっていいですか?

下山: はい、これまでやってきたCoinOtakuの経営をインターンとして活躍してくれていた学生に引き継ぎ、僕は新たにSenjin Holdingsというホールディングスを立ち上げました。コインオタクは「仮想通貨市場で日本一のメディアを作る」という目標を掲げて2018年に立ち上げました。2019年現在で多分日本一か二位くらいには成長していて、とりあえずここまでは順調に成長してきています。ただそれはファーストステップでしかなくて、この次をどう描こうか考えたときにホールディングス化というアイデアに行き着いたんです。

羽田: ほう。

下山: コインオタクは学生ライターがたくさん働いてくれていて、学生だけで作っているメディアです。そして起業をしたいインターン学生も多くいるんですが、学生ってツールは作れてもビジネスを作れる人ってまだまだいないなと。何かのアイデアがあって、それがあると確かに便利そうだけど、それって誰が買うの?みたいな。

羽田: あー、キャリアインカレでもそういうプレゼンはよくありますね。

下山: そう。でも、熱量は高いんですよ。やる気はある。折角アイデアと熱量がたくさんあるんだから、これはもったいないなと。だから僕がそのアイデアを活かした事業モデルを考える役割を果たしたいと思ったんです。誰かが考えたアイデアを僕が事業化するサポートをして成果が出せればホールディングスの中で子会社化して、その人に社長を任せちゃおうと。長期インターンシップも今では当たり前になり、学生がフルコミットするインターンも増えてますが、うちほど学生に裁量権を任せるインターンは他にないと思いますよ。実際、コインオタクはインターン学生が社長になってるわけですし。

羽田: ただ誰でもそれができるわけじゃないと思うんですが、下山くんから見て学生のビジネスに対して足りない点ってなんですか?

下山: やはりビジネスとは何なのか、という問いに対して答えが明確に言えるかですよね。僕は超シンプルに考えて「需要に対して供給して取引を成立させること」だと思っています。ただこれを成り立たせるには3つの力が必要だと考えていて。
1つ目は需要が何なのかを把握する力、2つ目は供給が何なのかを把握する力、そして最後は取引を成立させる力。

この中でもまず一番最初に身に着けなくてはならないのが「需要が何なのかを把握する力」、まあ平たく言うとマーケティング力ですね。

羽田: マーケティングって学生はよく使う言葉ですけど、実態はよく分かってないケースが多いんじゃないかと思ってます。言葉の定義も広いですしね。下山くんの考えるマーケティングとは?

下山: 例えばですけど、「痩せたい」っていう需要は多くの人にあるじゃないですか。でもそれだけでは消費者のニーズを把握したことにはならなくて。その需要をもっと細分化して言語化していかなくてはならない。例えば苦労を少なく痩せたい人もいればなるべく短期間で痩せたい人もいる、長期間かけて体の脂肪をじっくり落としたい人もいます。そうした細分化された需要を見極めてそこに何を届けるかを考えて実行するのがマーケティングですかね。例えば、同じ痩せたい人でも「カロリミット」を欲しがる人と「小顔ローラー」を欲しがる人の間には大きな違いがあります。

羽田: なるほど。学生の考えるビジネスプランを見ていると顧客像の深堀りや言語化が甘すぎるものは多いですからね。

下山: どこかにいる見込み顧客に一番刺さるアプローチをするのがマーケターの仕事だと思っています。だから僕らのインターンではこのマーケティング力を徹底的に鍛える仕事をしてもらいます。

羽田: じゃあそのインターンの概要について教えてください。

下山: うちのインターンは2種類あるんです。まずは普通のインターンで、これはCoin Otakuなどでライター業務をやってもらうインターン。これは週に30時間働ける事が条件で、面接で選考させていただいています。

もう一つが社長の卵コース。読んで字の如く社長を目指すインターンですね。これは朝7時から勤務開始で夜まで働いてもらいます。この社長の玉子コースは面接の中で試験を受けてもらいます。
面接試験ではあるテーマに取り組んでもらうのですが、もしだめでもフィードバックをさせていただき、2回までリトライが可能です。つまり、3回チャンスがあるんです。普通の面接だけではなくて実力もある程度見させてもらいますし、何より事業にコミットしてもらう覚悟が必要です。決して甘くはないんですけどね。

羽田: そりゃそうですよね。経営やるんですからね。しかしそこまでやるのってかなりハードですが、起業家って大変じゃないですか・・・?

学生起業家の苦悩と喜びとは?

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CoinOtakuはそれまでインターン生として活躍していた慶應義塾大学の木田君に引き継いだ。

下山: 起業家の6割は鬱になるって言われてますからね。やっぱりきついですよ。

羽田: 僕は起業も経営もしたことないんですが、経営って何がしんどいんですか?

下山: 自分で自分の人生を作っているように見えますが、同時に責任の範囲もどんどん広がっているって感じですね(苦笑)。
また常にマルチタスクで単純に忙しいので次第に心も疲れていきます。僕、いつも思うんですがメンタルヘルスの不調は心の弱さ、みたいな偏見を持っていると自分の首を絞めることにつながると思います。病識の有無があるかどうかって起業家にとっては大切なんじゃないかと。

羽田: 病識とは?

下山: 自分が病気であるということを自覚できるかどうか、ですね。僕はもう鬱とか否定的に捉えてないんで、やばいかもなと思ったら心療内科とか普通に行って処方してもらいます。
メンタルはロールプレイングゲームのMPみたいなもんだと思ってるんですよ。使ってれば減る。でも薬飲めば治る。早めにパブロン飲むくらいの感覚です。

羽田: ライトに言うなー・・・。それって結構なことだと思いますが・・・。

下山: そうですかね・・・。特別なことだと考えないほうがいいですよ。好きな子に振られるのだって辛いじゃないですか。だって僕、起業の辛さより昔彼女に振られた時の方が辛かったですよ。

羽田: (笑)。しかしそこまでしてやる起業の魅力って何なんですか?

下山: ハードなこともありますし万人に当てはまるわけではないと思いますが、僕みたいなタイプからすると生き方としては相当楽です。そして起業して経営していると3つの資本が得られると僕はいつも言っています。
まずは人的資本。経営者になると、潜る修羅場の密度がマジで違うので、成長スピードが段違いですね。常にはぐれメタルを倒している感じです。

次に金融資本です。ちゃんと計算している人は、ですが普通に就職するより全然稼げると思います。でもここは難しいところで意識してない人も多くて。やりたいことやビジョンを追いすぎているとマネタイズが追いつかないんですよ。だから割り切らないと金融資本は手に入らないかもしれません。僕もやりたいことは今の事業とは別にありますが、それをビジネスにするだけのスキルはまだ自分にはないと思っているので、常にアイデアを温めてチャンスを狙っています。

羽田: なるほど。では最後の3つ目の資本は?

下山: 社会資本ですね。学生起業家で経営している、という肩書、キャリアによって得られる信頼や人脈はとても多いです。またドラクエに例えますが、「自分は勇者です」と名乗ることで人が集まってくるんですよ。「街の住民」じゃ駄目で。僕の場合は「国内最大のビジコンキャリアインカレで優勝しました」から始まって幾つかのコンテストで優勝し、今は「学生起業家」と名乗ることで社会的な資本を築いています。僕ほどキャリアインカレの実績をうまく使わせていただいている学生もいないんじゃないですかね(笑)。

こんな感じで、起業すると3つの資本が得られるというのは成長欲求が高い学生には魅力なんじゃないかなと。

羽田: ハードだけど得られるものも大きいってことですね。

下山: そうですね。でもそんな難しいこと考えなくても単純に面白いですよ。部活みたいな面白さがあります。仲間と一緒にゲームを攻略している感じ。次はどのボスを倒しに行って、中ボスは誰でラスボスが誰で、、みたいな。

羽田: ちなみにラスボスは誰なんですか?

下山: 孫正義さんとかピーター・ティールとかですね。決算発表の動画とか見ていると、気が遠くなる差を感じますが。どうやったら倒せるか考えたりしますけどそればかりを考えていると次第にしんどくなります(笑)。

羽田: 今は学生のうちに起業する人も増えていますが、下山くんから見て起業家に向いているのはどんな人?

下山: まあ、学生起業はあんまりリスクないので興味あれば挑戦してみるのがいいと思いますけどね。失敗しても就職すればいいですし、就活も有利になるでしょうし。それはともかく、起業家に大切なのは根性あることですよ。途中で挫折した学生起業家を沢山見てきましたが、「自分のやりたいことじゃないかもしれない」というやめ方が一番多いです。重要なのは「やりたいことじゃないという思い」を黙殺できるか。僕だって面倒な作業をしているときは何万回も思ってますよ。そんな事考えずに受験勉強よりコツコツやれることが重要です。戦うマーケットを間違えなければ根性あればいけるはずです。

羽田: 根性か・・・。最終的にはそこなんですね。

下山: でも本気に捉えすぎないことも大切です。さっきもいいましたが真面目に真正面からやりすぎるとメンタル壊れます。心理学用語でアファメーションって言葉があって。引き寄せの法則とも言うらしいですが、「自分は大丈夫」とか「自分はプロ野球選手になる」とか自己肯定の言葉を言い続けるんです。ただ、こういうことに頼りすぎるとうまくいかなかった時の反動も大きいと思うんですよね。うまくバランスを取って戦うのが大事だと思います。あくまでクリアできなくてもたかがゲームって心のどこかで思うとか。

下山君の日常とオススメ漫画3選!

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「部活のような楽しさがある」と下山君。「ラスボス」を目指して仲間と日々戦っている。
羽田: ちなみに単純に興味があるんですが下山くんってどんな生活送ってるんですか?
下山: まず毎朝6時半ごろ起きてまず顔を洗って歯を磨きます。
羽田: 普通だ(笑)。

下山: その後の始業開始は7時からですね。

羽田: 7時から??

下山: 僕、オフィスに住んでるんで。オフィスの横の部屋に寝泊まりしてるので、起床してから仕事始めるまでのロスが少ないんですよ。それから仕事して夜にまた寝ます。

羽田: プライベートとかあるんですか?

下山: ありますよ(笑)。漫画をめっちゃ読んでます。

羽田: なるほど。では最後に、下山くんがおすすめする本や漫画を3つ、ご紹介してください!

下山: えー、迷うな・・・。まずはカイジですかね。勝ちへの執念やこだわりがすごいですよ。
まずカイジは、ギャンブル漫画なんですがその中でも金や人間に対する洞察が的を得ていて面白いです。普通の人が数千万、数億を一瞬で手にいれるにはどれ程緻密に考えないといけないのか、その上で運否天賦にも身をまかせるみたいなスタンスがよく分かるので好きです。

左利きのエレンという漫画も好きで、これは去年読んだ漫画の中で一番面白かったです。広告代理店に勤務する主人公をめぐる群像劇なのですが、才能を一つのテーマにしてて徹夜で読み切るほど良かったです。

サンクチュアリっていう漫画も好きです。これは内戦中のカンボジアで幼少期を過ごした2人が、日本を変えるためにそれぞれ日本一の極道と政治家を目指す話です。これ読んで総理大臣になろうかなと思ったくらいインパクトありました笑。

羽田: いやいや、ありがとうございます。渋いセレクションですね。では最後にこれからの抱負なんかを・・・。

下山: 倒さなければいけないボスはたくさんいるので、それらをまずは一つずつ倒していきたいですね。スタートラインはまあまあいい感じではこれたと思っていますがここからが勝負。失敗する可能性もまあまああります。僕らと一緒に戦ってみたい人は是非インターンにご応募ください!

羽田: 頑張ってください!ありがとうございました!!


下山君が総合優勝したキャリアインカレ2016プレゼン動画



2年連続の決勝進出となったキャリアインカレ2017プレゼン動画