【キャリアインカレ】delyインタビュー

【キャリアインカレ】delyインタビュー

1800万DLを誇るレシピ動画サービス『クラシル』で、一世風靡しているITベンチャーのdely。今回のテーマでは既に同社が培ってきたアセットをフル活用して、現実に存在し得るビジネスモデルの構築を目指していく方向性を打ち出しています。テーマに込めた思いやヒントなどを伺ってみました。

■お話をしてくれた方
柴田 快さん
執行役員
2015年早稲田大学商学部卒業。在学中に2つのサービス立ち上げを経験し、卒業後は、プロクター・アンド・ギャンブル・ジャパンにて経営管理を担当。2016年1月よりdelyにジョインし、映像の撮影・編集作業から人事・広報・営業に至るまで多彩な業務に携わる。現在はコーポレート部門の全体の統括を担当。

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夢物語ではない、リアルなビジネスを創出してほしい。


――今回のテーマを設定した背景から教えていただけますか。

柴田さん:学生のみなさんに、“現実味のある経験”をしてほしい、という思いをこのテーマには込めています。机上の空論ではなく、現実的にビジネスでも取り入れる可能性が高い事業を考えてください。

私たちが運営する『クラシル』は、3年半前まで存在さえしなかったサービスでした。しかしながら、この短期間で様々な挑戦をすることで、国内NO.1レシピ動画サービスにまで成長させることができました。

学生のみなさんにはこの3年半で私たちが獲得したユーザー数やデータなどの多様なアセットをフル活用して、全く新しい大きな市場を取りに行くプランを練り上げてほしいですね。

――新卒のインターンシップでも、同様のテーマを設定しているそうですね。

柴田さん:delyは創業当初、社員数4~5人のごく小さな組織でしたが、現在は約170名の規模まで拡大しました。中途のみならず新卒も受け入れる土台が出来上がったのを受け、2019年から新卒採用を開始しています。

一般的な新卒キャリアだと新規事業を考えるインターンシップを経験して入社してもまずは現場で一から下積みを数年する、といったパターンがほとんどです。しかし、私たちは最初から会社の頭脳として活躍してくれる人材を求めています。

そこで、本気で将来の頭脳となる人材と出会うべく、インターンシップでも学生たちに新規事業を考えてもらう課題に取り組んでもらっています。

ただし、新規事業ならば何でもいいというわけではありません。単なる青写真的に想像の世界を描くのではなく、私たちが持っているアセットをすべて開示して、自分たちが作ってきた背景を踏まえ、リアルにこれからdelyがやり得ることを考えてもらっています。

例えば、ユーザー数やダウロード数、コンテンツ、データも詳しく提示しますし、所有する関連会社の情報も細かく伝えていきます。

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――インターンシップでの反応はいかがですか?

柴田さん:正直、難易度は極めて高いと思います。事実、delyの社内でも新規事業を自分で考えて、形にしていった人間はほとんどいません。インターンシップで上がった学生たちの案に対しても、執行役員をはじめとしたdelyのメンバーたちが実態に即した厳しい指摘を入れており、何度も再構築を繰り返してもらっています。

ファクトなしに発想だけで考えるのは無謀。


――今回のテーマを考えていくためのヒントはございますか?

柴田さん:ビジネスにおいて自分の発想が真新しいということはごく稀で、世の中には似たようなサービスの実績やデータが落ちている、ということを意識してみてください。ファクトに頼らず進めるのは、あまりにも自信過剰すぎます。多様な新しいビジネスモデルを参考にして、要素分解してみると、アイディアを生み出すきっかけとなるはずです。

例えば、企業が消費者に直接的にモノを販売する「D2Cモデル」、ネットとリアルを融合する「OMO――Online Merges (with) Offline」、あるいは「サブスクリプションモデル」の進化版など、実際に存在するビジネスモデルから学んでみましょう。

どうしても発想からスタートしてしまう学生も多いでしょうが、それでは限界が生じます。トレースできるビジネスモデルを持ってきて、ギャップとなる部分をいかに埋めるかという考え方が、大事なポイントです。

――『クラシル』についても教えてください。

柴田さん:レシピ動画サービス『クラシル』は、DL数1800万を超え、累計動画数3万本を以上をかかえています。現在、「70億人に1日3回の幸せを届ける」をミッションに、かんたんでおいしく作れるレシピ動画を毎日配信しています。

撮影等もすべて自社で行っていますが、これはスタート時から変わらないスタイル。ちょうどその時代、YouTubeに対抗してFacebookが動画コンテンツに注力しており、動画をFacebookにアップすると優先的に上位に閲覧されるアルゴリズムを採用していました。当社がアップしたレシピ動画もおのずと多くの人に認知されるようになり、数字が一気に伸びていました。

以後、自分たちのメディアを持たず、SNS起点の発信に注力してきました。今もFacebook はもちろん、Instagram、Twitter、Youtube、TikTokといったSNSアカウントフォロワー数は400万人以上に達しています。もっとも過去の事例を見た上で他社のプラットフォームに頼りきりになる危険性を理解しており、いつまでもSNSで動画コンテンツがもてはやされるわけはないというのがわかっていましたから、先回りをして自社メディア――アプリやWebなどを構築してきました。その際にも競合アプリのモデルや実績なども分析し、自分たちの選択のための糧としていきました。

大切なのは常に世の中の事例に目を配って、変化していく時代の波に敏感に反応して、ファクトベースで市場の変化を理解していくことです。

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世の中のビジネスの構造を、理解するきっかけに。


――テーマに挑むにあたり、事前に準備すべきことはございますか? 

柴田さん:本当は勉強会でも開催しないと、わかりにくいところがあるとは思います。参考までにインターシップ1日目の講義内容を紹介すると、まずは『クラシル』の成り立ちについて話すとともに、メディアビジネスがどうなっているのかを広い視点で説明していきます。

メディアと言えば、一般的にはコンテンツを作るということになりますが、優れたコンテンツを集めたプラットフォームであるキュレーション型メディアも増えています。『クラシル』は自社でコンテンツを制作しているので前者のモデル、もう一つ当社で展開しているオトナの女性におくるメディア『TRILL』はキュレーション型のモデルということになるでしょう。

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また、ユーザーを集めていくには、広告投下をしていく必要があります。コンテンツの魅力だけで引っ張る手段もありますが、常に広告に資金投下してユーザーを獲得し続けずにほとんどのアプリサービスは成り立ちません。

投下資金を回収していく方法としては、広告、サブスクリプション、コマース、マッチングなどがあります。メディアビジネスで言えば、平均的に1ユーザーが企業にもたらす収益である「LTV (Life Time Value)」が、1インストールあたりの広告コスト「CPI(Cost Per Install)」を上回っていれば、一定の期間を経れば利益が上がるといった話もしていきます。

さらに、PLの見方などにも入っていき、売り上げ、原価、粗利、販管費、営業利益などの話となり、会社の収益性、将来性を浮き彫りにしていきます。その上で『クラシル』はどういうビジネスモデルに当てはまっているのかを考え、さらにサンプルとなる他社の事例を分析していくことで、ビジネスモデル構造の理解を深めていきます。

――最後に学生にメッセージをお願いします。

柴田さん:このテーマを設定したもう一つの目的としては、ビジネス構造の理解や整理をすることで、どの仕事にでも応用できる力を身に付けてほしいというのがあります。将来営業として働くときに相手先のビジネス構造を知っていれば提案力もあがりますし、経営企画として他社とアライアンスを組む場合も、相手先の財政状況、伸びている事業の実態がわかっていれば話がしやすくなる、というように将来どんな会社のどんな部署に入るにしても、ビジネス構造を把握する力は自分のキャリアにおいて大きな資産になります。

キャリアインカレに出場するみなさんにも、このテーマを通してビジネスの基礎力を身につけ、ビジネスの流れを見抜く力を高めてほしいです。リサーチをしていく中で多くのビジネスモデルに触れていくことになるでしょうが、気を付けてほしいのはパソコンの中には昔の情報しかないということ。最新の情報を知るには現地に出向いたり、第一線にいる人に話を聞いて、生の情報に触れることが最善の手です。

学生のみなさんにできるかどうかはわかりませんが、中国市場のIT進化を体感したければ、現地に出向いてそこにいる人々に話を聞くのが最も濃密な情報が得られる手法になるはずです。中国の生活の中で溶け込むシェアサイクルだったり、決済サービスだったり、あるいは保険のサービスだったりを通して、その変化のスピード感を知ると、PCを通じた情報以上に得られるものがあるのではないでしょうか。

今回、あえて難しいテーマを設定しました。果敢な挑戦者との出会いを期待しています。
がんばってください。

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