みんな、自分の環境に何かの違和感を感じている。 2年連続で挑んだキャリア甲子園 西岡葉月(智辯学園奈良カレッジ)

みんな、自分の環境に何かの違和感を感じている。 2年連続で挑んだキャリア甲子園 西岡葉月(智辯学園奈良カレッジ)

いよいよ本格的にスタートしたキャリア甲子園。決して甘くはない戦いの中で勝ち抜いていくのは至難の業だ。栄光の決勝大会に進出できるチームは全国の中でもごく僅か。
そんな過酷な大会に2年連続で挑戦し、1回目は準決勝で敗退したものの、2回目の2018年度大会で決勝大会まで進出したチームがいる。
2年連続同じメンバー、同じチーム名で挑戦した智辯学園奈良カレッジの「インビジリスツ」。2018年度大会唯一の関西勢ファイナリストとなったインビジリスツのリーダー、西岡さんに話を聞いた。彼女の口から語られたのは課外活動や大学受験への葛藤だったー。
(取材・執筆:羽田 啓一郎)
*本記事は2019年5月時点の情報を元にしています

この環境から抜け出したい!そして出会ったキャリア甲子園

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2年越しの挑戦で見事決勝戦に進出した。全員色違いのパーカーで存在感を発揮した

羽田:おひさしぶりです!

西岡:お久しぶりです。キャリア甲子園では色々お世話になりました。

羽田:西岡さんって何か静かな闘志を持っているというか、何か腹の中にグツグツとしたものを抱えてるんじゃないかなと思ってるんですが、その辺りの話を今日聞きたくて。

西岡:そうですかね・・・。あまり意識はしてないですけど。

羽田:でも課外活動とか色々取り組まれてますよね。キャリア甲子園に限らず。

西岡:そうですね、私は奈良の山の上の学校に小学校の頃から通ってるので。そういうところにこもっていると視野が狭くなっちゃうんです。

羽田:あ、智辯学園って小学校からあるんですね。じゃあずっと同じ環境なのか・・・。どうしてそんな課外活動に積極的になり始めたんですか?そのルーツをまずは教えてください。

西岡:もともと私は小さい頃からやりたいと思ったことは躊躇せず飛び込むタイプではありました。それこそ5歳くらいの時にヴァイオリンがやりたいと強く思って、親におねだりしたんです。それで条件が小学校に受かることで。それで今の智辯学園に小学校受験で行きました。それで私はずっと音楽をやってきて将来はピアニストになりたいと思っていたんです。

羽田:ピアニスト・・・!今は思っていないんですか?

西岡:そうですね、中学校に上がると進路のこととかを考え始める人が多くて、私も自然と高校卒業後の進路を考え始めたんですけど、私の場合は音大なのかなと何となく思っていたんです。でも、情熱や熱意だけではやっていけない事がなんとなくわかり始めて。才能も色々と犠牲にして努力する覚悟も私には足りない。自分がステージに立って拍手を浴びている姿がどうしても想像できなかった。だから音大は厳しいかなと思ったのですが、 それがダメとなると私は何を目指せばいいんだろう、と。

羽田:なるほど、中学校の時点で自分の進路について悩み始めたんですね。

西岡:でもそれが良かったんだと思います。周りの子達は環境的に「国立大学」や「有名私大」に行くものだとある意味周囲から自然に刷り込まれているように感じました。 そもそもどうするべきかを考えるより前に勉強するのが当たり前になる。私の場合は小学校の頃からの夢があったせいで自分の進路を悩むきっかけができてしまったんですよね。でも悩んだものの普段の日常生活の中にいると刺激や情報が足りない。それでネットで探して東京に出ていく機会を作っていきました。キャリア甲子園もその流れで知った形です。

羽田:キャリア甲子園はどこで知ったんですか?

西岡:もともと、2015年に出場していた知り合いの方がいて、彼の話で聞いてはいたんです。その時は「そういうのがあるんだ」という感じだったんですけど、その後自分が何かイベントじゃなくて打ち込めるものを探していた時にたまたまネットで見つけて「ああ、これだ」と。それで学校の友達を誘ってチームを組んだんです。

羽田:それが1年生の時ですね。その時からチーム名は「インビジリスツ」でしたけど、思い入れがあるチーム名なんですか?何かメッセージ性が込められていそうですけど。

西岡:いや、特に・・・。チームの四人の共通点なんだろうね、となって、全員学校ではメガネかけてるから「インビジリスツ」になった、、、と記憶してます。覚えてないですね(笑)。

羽田:そんなもんなんですね(笑)。しかし1年生初出場で準決勝進出はすごいですね。東京まで出てくるのは結構刺激があったんじゃないですか?

西岡:私は姉が東京に住んでいたので泊まるところもあったし、イベントで東京に来た事が何度かあったのでそこまでではなかったですが、他の3人は「東京だー!」とテンション上がってましたね。でも流石に私も1回目の準決勝はめちゃくちゃ緊張しましたよ。私、以前インタビューに出ていた久野さんに準決勝で負けたんですけど、 彼女たちが喜んでいる後ろに写っているのが私たちです(笑)。

羽田:ああそうか、2017年度大会で久野さんに負けたんですね・・・。悔しかったですか?
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2017年大会準決勝で勝ち名乗りを受ける久野さん達のすぐ後ろでうつむくインビジリスツメンバー。この時は制服だった

西岡:そうですね、でも何かバーっとすぎていった感じです。奈良の山奥から新幹線乗って東京に出てきて、緊張の中で企業の前でプレゼンして、周囲には優秀な高校生たちがたくさんいて・・・。私たちには刺激的すぎる1日でした。ちなみに私、久野さんとはその後も何度かニアミスしているんです。キャリア甲子園のすぐ後にあったワールドスカラーズカップに二人とも出場していますし、彼女が進学したUWCに私も受験して。ただ、UWCは私は落ちてしまったんですけど。だから久野さん、すごいなと一方的に遠くから見てました(笑)。

羽田:なるほど、じゃあその悔しさをバネに2年目のキャリア甲子園に挑んだというわけですね。

2年目の挑戦で悲願の決勝進出!

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準決勝会場である新宿に向かうインビジリスツ。戦いに向かう旅路の中で絆も深まったはず。

西岡:私というより、他の3人の熱意がすごかったですね。2年生の夏ころに「今年も出るよね?」と自然に言われて。「あ、出るんだ」って感じでした、私は。でもみんながやる気ならリベンジしようかなと。他のメンバーは1年生の時のキャリア甲子園で色々と目覚めた子も多くて、その後課外活動に積極的になったりしてて。キャリア甲子園への思い入れは強かったみたいです。

羽田:おお、それは主催者冥利につきますね・・・。嬉しいです。しかし2年目で見事雪辱を晴らして決勝進出。嬉しかったんじゃないですか?

西岡:私は割と冷静でしたよ。準決勝でぶつかった他のチームもすごいプレゼンがたくさんあって。結構どれも方向性が違ったので、私たちも自信はあったけど企業がどの方向性を重視するか次第だな、と冷静に見ていました。でもとにかく2年目はチームメンバーが他の課外活動を経験して強力になっていたのでチームの実力は負けていない自信がありました。1年目の時は制服で準決勝も行ったんですけど2年目は制服じゃなくて私たちオリジナルで行こう、とメンバーの発案で。それで全員色違いのパーカーにしたんですけど。

羽田:パーカー、インパクトあってよかったですね。じゃあ2年目はチーム力の勝利だったんですね。それ以外に何か1年目の時との違いはあったんですか?

西岡:2回目なので、キャリア甲子園がどういう大会かを多少は知っていたのは大きかったと思います。あとはやはり、1年生の時は自分たちの考えをプレゼンするところで止まっていた。でも2年生の時は評価するのが企業なので、企業にとって重視するポイントはどこだろう、と考えながら進めていました。私たちのテーマ出題企業の分析を沢山して、彼らがこれから向かうであろうビジネスの展開に合わせた方針で企画していったので。だから勝ち名乗りを受けた時は嬉しかったですね。戦略が当たったな、と。羽田さんが何かの記事で「負ける理由はないけど勝つ人には勝つ理由がある」って言ってたじゃないですか。その通りだなーと思ってて、私たちは企業に選ばれる理由をちゃんと考えて作っていけたのは大きかったですね。

羽田:でも準決勝で勝ち名乗りを受けた時の写真を見ると、他の3人は大喜びしてますが西岡さんは無表情ですね。
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2018年の準決勝大会で勝ち名乗りを受けた瞬間。チームメンバーは爆発しているのに西岡さんは冷静だ!

西岡:いや、嬉しかったですよ(笑)。ただ冷静だっただけです。それより他の3人がむちゃくちゃ喜んでいたのが嬉しくて。メンバーの一人は喜びすぎて帰りの新幹線で具合悪くなってましたからね(笑)。

羽田:いやあ、2年目の悲願が叶ったらそれは嬉しいですよね・・・。というわけで、目指していた決勝大会に向かったわけですが、自信のほどはいかがでしたか?

西岡:誤解を恐れず言いますが、優勝したかったですし、優勝できるよう最大限の努力はしていました。でも正直、優勝するのは難しいかもしれない、と決勝前から感じていました。2年やって思っていたんですけど、キャリア甲子園は高校生らしい志とかビジョンがあって、ある意味社会的スケール感のあるプレゼンが多いじゃないですか。私たちは実際の企業課題 と私たちが持つ現代の課題意識 に寄せていったので、そこがどうしても弱いなと思っていたんです。もちろん全力は尽くしましたけどね。だから、結果については納得感ありますし、「やりきった」と自信を持って言えます。後悔はありませんね。私、バイエル代表のEVERESTの平林さんとかも以前から一方的に知っていたので、やっぱり凄い舞台だなーと思ってました。

羽田:なるほど、でもそうやってやりきったと言えるのは素晴らしいことですよね。ちゃんと結果を出せたわけですしね。

西岡:そうですね、それに私としてはメンバーが何かしらの刺激を受け取ってくれたのが嬉しくて。こないだ、メンバー全員から手紙をもらったんですよ。キャリア甲子園誘ってくれてありがとうって。キャリア甲子園を始めた頃は私の形のない焦燥感でもがいていたのがきっかけですが、こうして同じ高校の仲間に伝えることができた。私はたまたま、自分が何に向けて勉強するべきか悩んで、課外活動を始めて視野が広がりましたけど、他の子はそうではなかったですからね。あとは色々な人が味方になってくれたのも嬉しかったです。

羽田:味方?

西岡:うちの学校は課外活動をする人もあまりいなかったから制度が整っていなかったんです。ワールドスカラーズカップは決勝大会まで進出したので私もアメリカまで行くことになったんですけど、公欠がなかなかでませんでした。部活などの学校を通じた行事はもちろん公欠扱いとかあるんですけど、個人の意思で行う課外活動は理解いただけないことも多くて。でもキャリア甲子園の決勝戦進出は校長先生まで応援してくれて一発で公欠出て。それで全国大会規模の課外活動は公欠が出るルールになったんですよ。これは密かな自慢です。ドヤって感じです。

羽田:それは偉業ですね!確かに個人での課外活動はまだまだ一部の意識高めの子の活動になっていて理解されないことも多いですからね。ではその流れで西岡さんが感じていた焦燥感、課外活動に勤しむモチベーションの源泉、高校生の進路選択についての課題意識について教えて欲しいです。

日本の高校生みんなが感じてる、大学受験への違和感

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彼女の感じている違和感は、多くの高校生も共感するはずだ

西岡:私が語る資格があるのかわかりませんけど・・・、一人の女子高生の感覚としてお話をさせていただくと、 みんな「大学受験で人生決まる感」がすごいんですよ。自覚している以上に受験って高校生の中で重いものになっていると思います。課外活動を通して私は色んな選択肢が世界にはあるんだと知りましたけど、圧倒的多くの高校生は「大学進学するかしないか」という選択肢しかないんじゃないでしょうか。でも進学しない場合の選択肢は思いつかない。だから大学進学が前提で、その中でどこに進学するかどうかで人生が決まる、、、という。

羽田:大学受験で人生決まる感がすごいって、、、なかなか強いワードですね。それは一部の意識が高い高校生以外も思っているものなのですか?

西岡:いや、日本全国みんな思ってると思いますよ。でも言語化ができていないんだと思います。特に中高一貫校とか進学校に通っている高校生はあまりにもレールにハマりすぎていると思います。授業や学校の不満や悪口は言いますけど、いざ自分が何をするかというと身動きが取れないんです。やりたいことがあっても「受験があるから」と大学受験を言い訳にしてしまう。全ての優先順位の一番上に大学受験があるんです。親や先生から昔からずっとそう言われ続けてるから無意識にそういう思考回路になってる。自分が思考のレールにハマってると気づけないくらい、レールにハマっちゃってるんです。

羽田:ううむ、それは深刻ですね。でも気持ちはすごくわかる。

西岡:そう、気持ちはすごくわかります。たまたま私は音楽の道に進もうと最初思って周りの受験勉強と少し違う道に進んでいたから考える機会ができただけで。今は俯瞰して自分の可能性と進路を考えて、脳科学の道に進もうと思っています。でも私は飽き性だから途中で進路を変更しやすくて、更に趣味として音楽をやりやすい海外の大学もいいなって考えてますね。

羽田:そうやって選択肢が広がって具体的になっていったのはやはり課外活動をしていたからなんですかね?課外活動はもっと色んな高校生がやったほうがいいと思いますか?

西岡:うーん、結論から言うとどっちでもいいと思いますよ。モヤモヤしてたり興味がある子が参加しやすい土壌は必要だと思いますけどね。やっぱり同じような人が集まりがちな学校から外に出ると世界が広がりますからね。ただそもそもなんですけど、私は学内、課外と分けてないです。全て学生生活の一部ですから。

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