【キャリア甲子園】バイエル インタビュー

【キャリア甲子園】バイエル インタビュー

“Science for a better life”を掲げ、長期的なスパンでのヘルスケアや食糧問題に取り組むほか、半世紀以上にわたってパラスポーツの支援に取り組んできたバイエル。パラリンピックにも数多くの選手たちを送り出し、現在までに82個ものメダルを獲得しています。たとえば、リオ・パラリンピックの4X 100メートルリレーで優勝したドイツチームのメンバーは4人全員がバイエルの所属選手でした。今回はバイエルの腫瘍・血液・婦人科領域事業部所属の桝谷さんとバイエル所属の車いすラグビー選手である小川さんを訪ね、テーマに込めた想いやパラスポーツの今後について語っていただきました。

■お話をしてくれた方
桝谷里紗さん
バイエル薬品株式会社 腫瘍・血液・婦人科領域事業部
大阪大学医学部保健学科で看護学を学び、同学大学院医学系研究科に進学。2011年バイエル薬品に入社し、MR(医薬情報担当者)として、医師や医療機関などを中心に幅広い関係者と協働して医薬品の適正使用の為の情報提供・収集・伝達等の業務に携わり、現在はwebプロモーションの活動にも従事している。プライベートでは3歳の女の子と0歳の男の子という二人の子どもの母親として、日々育児と仕事の両立に奮闘している。

小川仁士さん
バイエル薬品株式会社 車いすラグビー日本代表強化指定選手
18歳で出場したモトクロスのレース中の事故により頸椎を損傷。胸から下と、手の指の麻痺という後遺症を負う。その後、リハビリ中に日本代表選手に誘われ、車いすラグビーを始める。2014年に選手登録。2018年、より良い練習環境を求めてバイエル薬品へ。現在、パラリンピック東京大会に向けて猛練習を重ねている。2019年9月に開催された「2019 IWRF 車いすラグビーアジア・オセアニア選手権大会」で日本代表メンバーに初選出され、日本チームの準優勝に貢献した。

undefined
——世界90カ国で事業を展開するグローバル企業であるバイエルですが、高校生の中には「何の会社?」と思う方もいると思います。まず、バイエルという会社を簡単にご紹介いただけますか?

桝谷さん:バイエルは、ドイツで創業した150年以上もの歴史を持つライフサイエンス企業です。“Science for a better life”を目的として掲げ、ヘルスケアと農業関連の領域を中核事業とし、革新的な製品を通じて、世界人口の増加と高齢化によって生じる重要課題克服への取り組みをサポートしています。高校生の皆さんの中には解熱鎮痛薬の「アスピリン」の名前を聞いたことがある人もいるかと思いますが、それもバイエルの製品です。

undefined

——ありがとうございます。では改めて、バイエルが今回のテーマを選定した理由を教えてください。

桝谷さん:ご存知ない方も多いかもしれませんが、バイエルは世界的に見てもかなり早い段階でパラスポーツに取り組み始めた企業なのです。バイエルは1863年にドイツで創業しました。その後、1895年に、現在バイエルの本社があるレバクーゼンに工場の建設を開始しました。当時は何もなかったこの場所に、工場を建て、社員の住まいや病院、子どもたちの学校をつくり、一つの大きな街を形成するようにしてバイエルは発展していったのです。

そして1904年、社員の人たちの、より良い暮らしのためにと福利厚生の一環としてスポーツクラブを創設し、その後、社員の子どもたちのために、退職したシニアの人たちのために、みんなで観戦・応援するためにとクラブが増え、1950年には障がいのある人のためのスポーツクラブが誕生し、今ではドイツ最大の障がい者スポーツクラブとなっています。

半世紀以上、パラスポーツと向き合い続けてきたバイエルだからこそ、オリンピック・パラリンピックを来年に控える中で、この国のパラスポーツへの関心をもっと高められないだろうかと考えました。高校生がこのテーマにふれることで興味を深め、パラスポーツ自体について考え、パラリンピック東京大会をより楽しむきっかけを作れないだろうかと思ったのです。

——今回のテーマについて、パラスポーツの競技者としてはどんな気持ちですか?

小川さん:会社がこうしたテーマでキャリア甲子園に参加すること自体も競技者として励みになりますし、今回のテーマに高校生の皆さんが取り組んでくれるのは、応援されている気持ちになり、それだけでもとてもうれしいですね。

undefined

——ちなみに、小川さんが「アスリート雇用」としてバイエルに入社した経緯はどのようなものなのですか?

現在、車いすラグビーの競技者としては7年目になります。バイエルに所属する前は他の企業でデスクワークをこなしながら練習を重ねていましたが、バイエルのパラスポーツへの理解と競技者のサポート環境に惹かれて、昨年いわゆるアスリート雇用でバイエルに移ることを決めました。

パラスポーツの観点から、多様性を受け入れる社会の実現に繋げられれば

——次にお二人から、高校生がどういうところからこのテーマに取り組めばいいか、考える上で起点となる情報を教えてもらってもよろしいでしょうか?

桝谷さん:日本でも2020年のオリンピック・パラリンピックの自国開催に向けて、大会そのものへの関心は高まってきています。しかし、やはりオリンピックに比べると、パラリンピックへの関心はまだ低いというのが現状です。調査会社ニールセンスポーツの2017年の調査によると、パラスポーツを実際に現地で観戦したことのある日本人は、わずか1%だそうです。

とはいえ、2018年3月の調査によれば、前回のリオ・パラリンピックをテレビやインターネット配信など何らかの形で観戦した人の割合は51.7%、そして平昌では65.1%と、年々関心は高まっているようです。さらに、パラスポーツに対して「社会制度や国民の意識を変える力を持っている」と感じている人も多くいるようで、この辺りは今回のテーマを考える上で起点の一つになるかもしれませんね。

パラスポーツの関心が一過性のものになってほしくはありません。2020年をきっかけとして、パラスポーツの面白さや奥深さとは何か?を感じ取ってもらい、ここから持続的にこの関心が続いてほしいと思っています。

——小川さんは、このテーマや実際に観戦したことがある人の割合の低さをどう感じますか? 

小川さん:僕自身、怪我をするまでは、車いすテニスやバスケットがあるのは知っていても、車いすラグビーという競技があるのも知りませんでした。皆さんにもまずは気軽に“知る”ことから始めてほしいですね。たとえば陸上ひとつとっても車いすの競技もあれば義足で走る競技もあったりするので、そういうところから知っていってもらえたらと思います。とはいえ、皆さんに障がい者スポーツを知ってもらうことについては、僕たち競技者の側の責任もあるとも思っています。いずれにしても、あまり難しく考えずに、サッカーや野球を見に行くのと同じように、まずは気軽に競技場に足を運んでほしいです。

undefined

——日常生活で障がい者に対する「壁」を感じたりすることはありますか?

小川さん:東京大会が決まってからだんだん変わってきましたが、日本では街中を車いすで走っていると、ジロジロ見る方もいらっしゃいます。一方、欧米ではそんなことは全然ありません。たとえば義足でも長いパンツを履いていれば一目でそれとは分かりませんよね。日本では、そういう義足の若者が電車やバスの優先席に座っているとにらまれてしまったり、僕にしても障がい者用の駐車スペースに車を停めると、駐車場の係員が“君ダメだよ”と言いながら走ってきて、車いすを降ろしているのを見て、あっと驚いて戻っていかれたり、といったこともあります。

桝谷さん:おそらく、障がいのある人たちが日常生活で何ができて、何に困っているのか、そういった部分がまだよく知られていないのだと思います。だから、より多くの人が障がいについて知ってくれたら、社会全体がきっと多様性を認め合い、いろいろな人が生きやすいものになるはずです。そうしたことも、パラスポーツを通じて一緒に考えていける機会があればと思います。実際パラリンピックの意義としても「創意工夫」「多様性」「バリアフリー」「発想の転換」という4つが掲げられています。

「パラスポーツ=障がい者だけの競技」ではなく、誰もが楽しめるスポーツであることを伝えたい

——たとえば自分だったら、どんなアイデアを出してみたいと思いますか?

桝谷さん:私だったら、“どうやったら知ってもらえるか”ということから考えるかもしれません。さらに「持続的に」という観点で考えると、子どもたちにアプローチするのもの一つの手かなと。保育園、幼稚園、小中学校、高校といった場所でパラスポーツを楽しく知る機会をつくることができたら……とアイデアを出していくのも良いと思います。とはいえ、これはあくまで個人的な意見なので、高校生の皆さんには私のアイデアにとらわれることなく自由に考えてもらいたいと思います。

undefined

小川:パラスポーツというと、車いすがないとできないと思われたり、大げさに捉えられがちですが、そんなことはありません。たとえば「ボッチャ※」という競技は、ボールさえあれば誰でもできます。障がい者が健常者のスポーツをするのは難しい場合も多いですが、パラスポーツには健常者も参加できます。そんな風に一緒に体験して遊び感覚で競技を知っていくことができるのもパラスポーツのいいところです。「体験」や「遊ぶ」という視点で、このテーマに取り組んでみるのも良いと思います。

※ボッチャ…全世界40カ国以上で普及している、パラリンピックの公式種目スポーツ。赤・青6個ずつの皮製ボールを投げ、白い的球〔まとだま→ジャックボール(目標球)〕にどれだけ近づけられるかを競う。 地上のカーリングと呼ばれている

——なるほど。体験してみると、見える世界は変わってくるということですね。

小川さん:そうです。それに、パラスポーツはとても奥の深い世界です。競技者は、腕や足などの身体の障がい、視覚障がいや知的障がいなど、障がいも様々に異なれば、程度も色々です。障がいの種類や程度によって試合のクラスも分かれていて、平等に競技ができるように工夫されているんです。車いすラグビーは車いす同士がぶつかりあう迫力満点の競技で、競技用の車いすも攻撃用・守備用で形が異なっています。

また、車いす陸上では最先端テクノロジーを使ったオーダーメイドのマシンが並び、車いすのF1と呼ばれていたりと、テクノロジーの観点から楽しむこともできます。知れば知るほどたくさんの魅力が見つかると思うので、様々な視点でパラスポーツを見つめてほしいですね。

若い人の発信するパワーはすごい。2021年以降も一緒に盛り上げていきましょう

——最後に、キャリア甲子園に参加する高校生たちにメッセージをお願いします。

桝谷さん:こういったビジネスコンテストに高校生の時に参加できる皆さんをとてもうらやましく思います。大人になると、データや知識に頼ったり、難しく考えすぎたり、頭でっかちになってしまうんです。だから、皆さんには高校生ならではの若い感性、吸収力、発信力を活かして、大人から子どもまで巻き込むことができるアイデアを考えてほしいです。

あと、最近はパラスポーツの体験イベントなど、実際に競技とふれ合える機会も多くあります。まずは足を運んで、自分自身で体感するところから始めてみるのもよいかもしれません。そして何よりも、この機会を楽しみ、仲間との絆を大切にして頑張ってください。

小川さん:若い皆さんの発信力は本当にすごいと思います。同じことを言っても、若さというパワーで、耳を傾けてもらえます。そのパワーを是非、パラスポーツにも分けてください。私が車いすラグビーの試合をするとき、会場に観客がいるかいないかでやっぱりモチベーションは違ってきます。たくさんの声援に包まれると「やるぞ!」という気持ちになれるんです。オリンピックやパラリンピックをゴールとせず、2021年以降も、より多くの人が競技場に足を運び、みんなでパラスポーツで盛り上がっている。そんな未来を一緒につくりましょう。

undefined