ちがう世代からの見られ方を知る。
それって案外、同じ世代と話しているときよりも自分の強さとか弱さに気づかせてくれるものなのかもしれません。
「最近の若い奴らは・・」の言葉のもとに、大人たちがきみたちへ贈るエール、ぜひご覧ください。

スマホを捨て実家を出よ! ― NewsPicks CCO(最高コンテンツ責任者)佐々木紀彦さん

佐々木紀彦さんは国内外100以上のメディアから経済ニュースを配信する『NewsPicks』の CCO(最高コンテンツ責任者)。会員ユーザー数約330万人へ配信するニュースコンテンツをプロデュースしています。

そんな佐々木さんも学生時代は、1000冊超の本を読み、バックパッカーとして海外を旅し、海外留学でマスターを修了するなど、「自分探しの日々」だったと振り返ります。そんな佐々木さんだからでしょうか。体験に裏付けられたお話は、若者の心を刺激し、納得感のある言葉の連続でした。

今ほど若いことが有利な時代はない。

佐々木さん:「最近の若い奴らは」って言い始めたら、自分がおじさんになっている証拠だと思うので、できるだけ言わないようにしているんですけど(笑)。ただ、今ほど若いことが有利な時代は、後にも先にもそうはないだろうなというふうには感じています。

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ーなぜ、若者にとって有利な時代なんですか?

佐々木さん:なぜかと言いますと、皆さんご存じの「高度経済成長期」を考えてみてください。終身雇用や年功序列といった同じようなルールで、何十年もずっと成長することができたという意味では、「高度経済成長期」は日本の歴史の中でもすごく異常な時代だったわけです。

ところが、今まで上手くいっていたルールが、まったく通用しない時代に今変わりつつある。そうなった時、これまでのルールを知っていることが、ある種の弱点になりかねない。たとえば、アナログに慣れ親しんできた人は、なかなかスマホみたいなデジタルを受け入れられないでしょ?

だけど、アナログの世界を知らない人はデジタルにすぐ適応しますよね。つまり、時代が大きく変わっている時は、頭が白紙であることが非常に強みになるということです

ーなるほど。今の若い人たちにとっては追い風ですかね。

佐々木さん:ところが、その有利な状況を十分に活かせていないように見えることがあるなと。

若い人たちって良い意味で真面目すぎるし、従順すぎるから、大人の言うことを信用しすぎているような気がする。でも、その大人たちがつくったルールがいろんなところで崩壊しているので、大人を信用しない方がいいぞと言いたい。

まず、「この大人たちは、今の“時代”をわかっているのかな?」という懐疑的な目を持ちつつ、大人たちと偉い人たちとも付き合っていく必要があるんじゃないかな。その上で、「自分の考えの方が正しいんじゃないか」と自分なりの仮説を立てて、それに向かって行動していくことが大事。

だから、若い人に対しては「大人を信じず、Going my wayで行ったらどうですか?」ということがまずひとつ伝えたいことですね。

大人は自分たちがつくったルールを、変えることができずに困っているんですから。よく「若者、よそ者、バカ者」って言われますけど、「それって違うんじゃないの?」って一番言いやすい立場に居るはずなので、その期待を込めてね。

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このままだと世の中が大きく変わった時、地獄を見る若者が増えると思う。

佐々木さん:まだそこまで若者のガンガン言うところが出てきてないんじゃないかなっていうのが、ちょっと気になるところですね。自分たちの世界の中でだけ生きてしまっているんじゃないのかなって。

スマホとかソーシャルメディアとか、ああいったものは一見世間とつながるようで、むしろ視野を狭める可能性が高いっていうのが、この10年でわかってきたことだなと。

ーというと?

佐々木さん:同じような趣味思考を持つ人を見つけやすかったりする快適な環境が常にあるのが現代のSNSが日常にある生活だと思うんです。そうなると、リスクを冒してまで未知の場所に探しに行かなくても済んでしまうでしょ?

ーその心地よさをあえて捨てるには?

佐々木さん:ある種修行だと思って、自分からそれを断ち切るより他はないでしょうね。あとやっぱり本を読むことかな。

本の良いところは死んだ人とも話し合えるってことです。福沢諭吉が書いた本を読めば、その時間はある種、福沢諭吉と対話している時間じゃないですか。そういうプロセスがあると、自然と知識もコミュニケーション力も、さっき言った批判的精神も全部高まるので、意識して本を読む時間を確保してほしいですね。

ーニュースを見ることも大切ですか?

佐々木さん:誤解を怖れずに言えば、私は別に知らなくてもいいと思いますね。ニュースって「New」っていうぐらいで、つまり新しいことですよね。今日何が起きたか、昨日何が起きたか。でも、本当に大事なものって新しいことじゃなく、古いことや普遍的なことだと思うんです。

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佐々木さん:少なくとも就活に突入するまでは、物理とか生物とか普遍的な法則を学んだり、文豪の作品や古典、歴史を読んだり、もっと深いものを味わうことに同じ時間を使ってほしいですね。

ー読書以外に佐々木さんのおすすめの時間の使い方は?

佐々木さん:ありきたりかもしれませんが、僕にとっては旅です。ただ、旅も昔よりインパクトが小さくなってしまいましたけどね。だって昔は携帯電話が海外で繋がらなかったり、スマホがなかったので行きたい場所に行くだけでも一苦労だったのに、今はGoogleが大抵の場所に連れて行ってくれる。

便利なんですけど、あの便利さに慣れすぎると、結構人間って力が弱まるところもあるなあと。もっと不確実なものにも挑んで、地力をつけることが大事かなと思いますね。

ーそれがこれからの未来を強く生き抜く力に繋がると?

佐々木さん:そう思います。将来まで何らかの形でレールが敷かれているって思うこと自体が、やっぱりおかしいんだと思います。

たとえば、「有名企業に行く」というレールに乗るだけの人生を止めない限り、将来への不安を消すことはできないし、世間の奴隷になってしまいますよ。

世間っていうのは、ある時は親であったり、ある時は先生であったり、ある時は友達だったりすると思うんですけど、そういう世間からの評価や指示の奴隷になったまま30代とかになっちゃうと、世の中が大きく変わった時にその人は地獄を見ると思います。

これからの世の中では、何が起きても柔軟に生きていける力があること自体が何よりも大事なので、若い人には意識してそういう力を付けてほしいなって気がしますね。

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来るべき時代に備え、自分の頭で考えられる人になっておく。

佐々木さん:もうひとつ、20代前半の人にぜひ言いたいのは、どこかのタイミングで親の影響下から離れてもらいたいですね。

ーつまり一人暮らしをしろと?

佐々木さん:今って親子がすごい仲良しじゃないですか。あれって素晴らしいことなんですけど、実家にずっと住み続けて、母親と娘が友だちみたいになっちゃうのって、やっぱり良くないと思うんですよね。一度、一人暮らしを経験した後に、改めて友人のような親子関係が築かれるのは良いと思うんですけど。

ーその違いはなんでしょう?

佐々木さん:結局、親から離れない限り、「個」になれないじゃないですか。個人としての「個」になれないので。だから一度、可能であれば一人暮らしをして「個」に成長して、親子がそれぞれ「個」として向き合って、友人関係に発展するのは大賛成です。

昔は、地方から東京の大学に進学したり、東京の会社に就職したり。強制的に親元から離れて、「個」にならざるを得ないイベントというか、社会的な流れがありました。でも今は、東京の人は東京の大学に行き、地元の人は地元の大学に行くというのが増えていて、実家を離れないじゃないですか。

それによって若者の自立が、異常に遅れていると思うので。私は「一人暮らしを一度は絶対にしなきゃダメだよ」派なんですよね。離れてみると、親の有り難みとか、尊さもわかると思いますし。それでまた仲良くなった方が、より良い親子関係になると思います。

ーそれは佐々木さんの経験から出てくる考えですか?

佐々木さん:世の中の、いろんな人にお会いした上での実感値ですね。やはり、一人暮らしをするとなると自分で家を探して契約して、バイトしてお金を稼いで、買い物してメシをつくって、お風呂やトイレを掃除して、すべてのルーチンが自分の日常になるじゃないですか。自分でお金の出入りからすべて考えるので、大げさに言えば経営者的なマインドが備わると思う。

ーところが実家にいると親がぜんぶやってくれる

佐々木さん:そう。一から自分で立ち上げて、全部自分で責任を持って考え抜くって発想や、思考が弱まる気がするんですよね。

ー先ほどの“自ら仮説を立て、自ら行動できる人間”が育たないということですね

佐々木さん:そうなんです。繰り返しになりますけど、レールがある時代はあんまり人に差はつかなかったんですよね。常識を疑うことができない人も、自立していない人も、ある程度社会のルールの力によって最低限のところに行けたんです。

でも今後、ルールが壊れると、これまでより自分の頭で考えられる人と考えられない人の差が開いてしまう。そういう時代に備え、やっぱり自分の頭で考えられる人になっておくことが大事。自分で動ける人になっておく。その意味とか価値みたいなものがこれまでより断然大きくなる。だから、その一歩目として「まずは実家を出ろ!」と声を大にして言いたいですね。

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