アナロジー思考とは?クリエイティブな発想を導き出す思考法

「仕事ができる人はアナロジー的思考のレベルが高い」としばしばいわれます。クリエイティブなアイデアを導き出すための強力な武器となるアナロジー的思考、そしてアナロジー的思考を利用して生み出された2種類の思考法「TRIZ(トゥリーズ)」と「USIT(ユーシット)」が今回のテーマです。

アナロジーとは

アナロジー(Analogy)は「類推」「類比」とも呼ばれ、特定の物事に関する情報を理解しやすくするために他の物事になぞらえることを指します。例えば、赤色で丸い形をしていて片手に載るくらいの大きさの金属性の物体『X』について誰かに説明するとしましょう。『X』は金属製ですが、「赤くて、丸くて、片手にのるくらいの大きさ」という要素は「リンゴ」と共通しています。そこで、「『X』は金属製だけど、見た目はリンゴに似ている」と説明します。多くの人が知っているリンゴに例えることで、実際に『X』を見たことがない人でも「金属でできたリンゴのような物体」を直感的にイメージしやすくなるでしょう。このようにわたしたちが普段から良く使う比喩表現も、アナロジーの一種といえます。

アナロジー的思考とは

アナロジーを利用した思考法のことをアナロジー的思考と呼びます。、アナロジー的思考は問題解決のためのアイデアを出したいときや物事を深く理解したいときに、自分が知っている他の物事を引き合いに出して考える思考法です。

アナロジー的思考を実践するときは、次のようなステップで行うとよいでしょう。

Step1.ターゲット(解決したい問題)を設定する
Step2.ベース(ターゲット世界と似たような構造を持ち、かつある程度離れた世界の領域)を選ぶ
Step3.ターゲットとベースを照らし合わせ、両者の共通点・相違点を洗い出す
Step4.ベースの問題を解決したアイデアを探し、ターゲットの課題を解決するヒントとする
アナロジー思考を鍛えるためには、特定の分野ばかりではなく幅広いジャンルにまたがった知識・経験を身につけることが効果的です。たとえば、「野球の打者」と「外科手術の助手」は全く異なる役割を持っています。しかし前者は「自分が一塁にいるときに次の打者が打ったら、すぐに二塁へ走る」という役割を、後者は「執刀医が手術中に汗をかいたら、邪魔にならないようさっと汗を拭う」という役割をこなすことがあります。両者は「行動そのものは地味に見えるかもしれないが、チーム全体の目標(点を取る、あるいは手術をスムーズに進め成功させる)を全うするために重要である」という共通項を持っています。このように、趣味の活動や子どもの頃好きだった遊びの中に全く関係ないように見える仕事や勉強に関するヒントが隠されていることも少なくありません。過去に得た知識・経験が多ければ多いほど、新しい物事や問題に出会ったときに「この問題は○○に似ているな」と自身の中に蓄積した知識・経験になぞらえて解決しやすくなります。幅広い知識を増やしていくためには、異なる性別・年齢・国籍の人との交流や海外のニュース、あるいは病院の待合室や美容院などに置いてある雑誌から見聞を広げるのもよいでしょう。広くアンテナを張ってさまざまな情報を得つつ、全く違う物事から共通の要素を見つけ出す訓練も行うとより効果的です。

仕事ができる人は、アナロジー的思考を身につけている

クリエイティブな仕事ができる人、ロジカルシンキングができる人は日々の仕事の場や生活の中でアナロジー思考を自然に行っている人が多い傾向があります。アナロジー的思考を日常で実施しやすくするための方法として、具体化と抽象化の2つの手法を紹介します。

具体的化と抽象化

具体的化は、考える対象を理解しやすくするために具体的で詳細な事柄に対象を分ける思考方法です。具体化することによってぼんやりしていたイメージが明確になり、イメージを実現するためにはいつ・何を・どうすればいいかがわかりやすくなります。例えばカレーを作って食べたい場合は、何人分作るか、どんな材料をどれだけ使うか、どんな手順で作るか、夕食に間に合うようにするにはいつから作り始めればいいか…などを考えることが具体化に当たります。

これに対し、複数の物事の共通点を見つけてひとつにまとめたり、物事を広い視点で捉えたりするのが抽象化です。抽象化することで物事の本質を捉えやすくなり、目的と手段の区別をつけやすくなります。先ほどのカレーの例なら、「カレーの作り方や材料」ではなく「カレーを自炊で作って食べることのメリットは何か」その理由を端的に考えることが抽象化の思考法になります。

例えば先ほどの「自炊でカレーを作って食べるメリット」であれば、レトルトカレーより安上がりだから、自分好みの味が作れるから、栄養バランスがいいから…など、さまざまな理由が挙がるでしょう。これらの理由をまとめると「無駄な食費をかけずに、栄養満点で美味しいものを食べられるから」というより広い視点からの解答が導き出され、さらにここから「満足度の高い食生活を送りたいから」というさらに広い視点の答えが導き出されます。まとめると、カレーを作って食べることは満足度の高い食生活を送るための手段のひとつということになります。

共通化(一般化)の概念と抽象化

考える対象から特に注目したい要素を抜き出し枝葉を切り捨てる抽象化の思考を理解できたら、特定の考え方や手法を複数の物事にあてはめる「共通化(一般化)」の概念も理解しやすくなります。共通化を応用すれば、複数の異なる物事に共通点を見出し問題解決・新しい価値の発見に役立てることができます。

■共通化の考え方の例
介護ボランティアを体験して最も良かったことは、人に喜んでもらえたことである

「人に喜んでもらいたい」という動機があれば頑張れる

人に喜んでもらいたいから、将来はウエディングプランナーを目指したい

介護ボランティアとウエディングプランナーは業界も仕事内容も全く異なるものであり、また「無償ボランティア」と「給料をもらって行う仕事」という相違点もあります。しかし、両者には「人に喜んでもらえる」という共通項があります。「介護ボランティアで人に喜んでもらえたことが嬉しかった」という体験から「『人に喜んでもらいたい』という動機が自分の頑張りにつながる」という要素を発見することができ、「ウエディングプランナーを目指したい」という異なる分野へのモチベーションアップに活かすことができるというわけです。

TRIZとUSIT

TRIZとは。40のリストで問題を解決!

旧ソ連で生まれたTRIZ(トゥリーズ)は日本語に訳すと「発明的問題解決の理論」といい、英語ではTIPS(Theory of Inventive Problem Solving)とも呼ばれています。

TRIZは特許(発明)に関する膨大なデータを分析し、そこから抽出された問題解決のためのあらゆる方法を、一定のパターンに分けた思考支援ツールです。ひとくちに発明といっても、それぞれの発明が生まれるまでにはさまざまな課題がありますが、これらの課題を分析していくとほとんどの課題が40パターンの解決方法のいずれかによって解決されたことがわかりました。この調査結果から生まれた「異なる分野の問題解決策や自然界の現象を学べば、97%の課題は簡単に解決できる」という考え方がTRIZの基本となります。

TRIZでは特定の課題を「分ける」「離す」「一部を変える」「バランスを崩させる」「2つを併せる」などの40項目の発明原理チェックリストに照らし合わせ、そこから課題解決のためのアイデアを生み出していきます。TRIZを実践するときは、あまり長く考え込むのではなく直感的なひらめきを重視しましょう。

 

No. 内容 チェック
【01】 分けよ
【02】 離せ
【03】 一部を変えよ
【04】 バランスを崩させよ
【05】 2つを併せよ
【06】 ほかにも使えるようにせよ
【07】 内部に入り込ませよ
【08】 バランスを作り出せ
【09】 反動を先につけよ
【10】 予測し仕掛けておけ
【11】 重要なところに保護を施せ
【12】 同じ高さを利用せよ
【13】 逆にせよ
【14】 回転の動きを作り出せ
【15】 環境に合わせて変えられるようにせよ
【16】 大ざっぱに解決せよ、一部だけ解決せよ
【17】 活用している方向の垂直方向を利用せよ
【18】 振動を加えよ
【19】 繰り返しを取り入れよ
【20】 よい状況を続けさせよ
【21】 短時間で終えよ
【22】 よくない状況から何かを引き出し利用せよ
【23】 状況を入り口に知らしめよ
【24】 接するところに強いものを使え
【25】 自ら行うように仕向けよ
【26】 同じものを作れ
【27】 すぐにダメになるものを大量に使え
【28】 触らずに動かせ
【29】 水と空気の圧を利用せよ
【30】 望む形にできる強い覆いを使え
【31】 吸いつく素材を加えよ
【32】 色を変えよ
【33】 質を合わせよ
【34】 出なくさせるか、出たものを戻させよ
【35】 温度や柔軟性を変えよ
【36】 固体を気体・液体に変えよ
【37】 熱で膨らませよ
【38】 「そこを満たしているもの」のずっと濃いものを使え
【39】 反応の起きにくいものでそこを満たせ
【40】 組み合わせたものを使え

 

TRIZ思考法の使い方例

「雨の日の外出を少しでも快適にするにはどうすればよいか?」という課題について、TRIZを使って考えてみましょう。

「分ける」…目的地に着いたら、濡れたもの・濡れていないものの置き場所を分ける。
「離す」…雨水がある場所からなるべく離れて移動する。
「一部を変える」…普段の服装や靴の一部を、水濡れに強いものに変える。
「バランスを崩させる」…特に思いつかないのでパス。
「2つを併せる」…傘だけ使うのでなく、傘とレインブーツを併せて使う。

…以下、残り35の項目についても同じように当てはめていきます。すぐに思いつかなければ、その項目はパスして次に行きます。

課題を40項目のチェックリストに当てはめて考えていくと、思いのほか多くのアイデアが出てくることでしょう。導き出されたアイデアの中からより有益と思われるものを厳選したり、他の人が考え出したアイデアを見せてもらったりして、さまざまな方法で活用してみましょう。

USITとは。6箱方式で創造的な問題解決!

USIT(ユーシット)はUnified Structured Inventive Thinking(統合的構造化発明思考法)の略で、「問題定義」「問題分析」「解決のためのアイデア作成」の3段階で構成されるアイデア発想法です。TRIZはさまざまな分野のデータを集めてきて考案されたため、体系がややわかりにくいという欠点を持っていました。アイデア発想の手順がより整理され明確になっているUSITは、アナロジー思考を自然に刺激して創造的・革新的アイデアを生み出すための手順書といえるでしょう。USITの大まかな流れは、以下の通りです。

Step1

まず解決したい問題を整理し、第1次アイデアの素となるチェックリストに照らし合わせてアイデアを出していきます。第1次アイデアのチェック項目は「モノからの発想法」「性質からの発想法」「機能からの発想法」の3つのテーマで構成され、各テーマはそれぞれ「複数をまとめてひとつにする」「1つを分ける」などに細かく分けられています。

Step2

「解決策の体系化による発想法」「解決策の組み合わせによる発想法」をまとめた第2次アイデア発想の元となるチェックリストに基づき、①で得られたアイデアを補完・再構築してアップデートします。

Step3

①と②を繰り返し、最適な問題解決方法を導き出します。

これらのステップを表にまとめたものがこちらです。

USITの使用例

「料理にかかる手間・負担を省くには?」という課題をUSITで考えてみます。まず、第1次アイデア発想の視点からさまざまなアイデアを出していきます。

・献立を考える手間をなくす(「モノからの発想法」より「そのモノを無くす」)
・味噌やカレールウなどの堅い調味料を液体にして、溶かす手間を省く(「モノからの発想法」より「固体から, 粉体,液体,気体へ」)
・複数の調味料をあらかじめ合わせておく(「モノからの発想法」より「複数をまとめてひとつにする」)
・カット済みの食材を使う(「性質からの発想法」より「大きさ・形状を変える」)
・圧力鍋などの道具を使って、調理の手間を減らす(「機能からの発想法」より「機能を別のモノに行わせる」)

次に、これらの第1次アイデアを第2次アイデア発想の視点に基づいて補完・統合・再構築してみます。例えば、「献立を考える手間をなくす」「いろいろな調味料をあらかじめ合わせておく」というアイデアを組み合わせて「市販の『○○(料理名)の素』を使う」(「解決策の組み合わせによる発想法」より「原理レベルで組み合わせる」)という新しいアイデアを導き出すことができます。この手順を繰り返して新しいアイデアを出し、あるいは導き出されたアイデアをアップデートし、課題解決に最適なアイデアを模索していきます。

アナロジー的思考で異分野の物事を結びつけ、新しいアイデアを導く

アナロジー的思考は、特定の物事に関する理解を深めたり新しいアイデアを導き出したりするために異なる分野の物事を結び付けて考える思考法です。多くの分野の経験・知識を身につけている人ほどアナロジー的思考がしやすくなり、「物事の本質を捉える」「新しいアイデアを生み出す」「自らモチベーションをアップさせる」などさまざまな能力を伸ばすのに役立ちます。また、アナロジー的思考はあらゆる問題解決に役立つTRIZやUSITにも活用されています。アナロジー的思考を早い段階で身につけることは、クリエイティブな仕事はもちろんあらゆる場面で活躍するための強力な武器となるでしょう。

日本TRIZ協会ホームページ」日本NPO法人 日本TRIZ協会

USIT詳細の説明」創造性工学研究所

USITの解決策生成技法(TRIZ技法による充実と参照)」大阪学院大学 中川徹

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